8月28日 埋もれていたウスバキチョウの受胎嚢(のう)の写真発見!

 山のメッセンジャーとして山に登った時にはかなりの枚数の写真を撮ってきます。持ち帰って700MBのCD−Rにして2〜4枚になることもあります。夕方帰ってその写真をすべて丹念に見ることは難しいので、比較的時間がある時にゆっくり見ます。
 8月6日赤岳から登り、小泉岳を歩いている時ウスバキチョウを見かけました。

この蝶は色も黄色ではなく白くなっています。砂礫の上にいたのですが、コマクサの近くの岩に張り付きました。
しばらく歩いていると今度は比較的きれいな色のウスバキチョウがコマクサの横にいました。

6月21日コマクサ平 8月6日小泉岳

左の写真は宮下様撮影、6月のウスバキチョウの色はこのように鮮やかです。
 8月6日小泉岳で撮った写真を見ていて蝶の体に不思議な物体を発見しました。白っぽい半透明の袋状の物がお腹のところについています。

不思議に思って「日本産蝶類標準図鑑」の本で調べたところ『受胎嚢(のう)』であることが判明しました。受胎嚢とは、アゲハチョウ科のギフチョウやウスバキチョウなどのウスバアゲハ類だけに見られるもので、交尾後、二度と交尾できないように♀のお腹に♂の分泌物によってできる袋状のものだそうです。蝶をよく知る人たちの間で一般的には『交尾嚢』と呼ばれているそうです。
 出来たての受胎嚢は白くて半透明で、一日たつと茶褐色・灰色・黒色に変わるそうなので、このウスバキチョウの受胎嚢は出来たてのようです。

 幼虫の食草であるコマクサの近くにウスバキチョウがいるというだけで絵になると思い、逃げられないうちにと急いで撮ったので、まさかこんな写真が撮れているとは思ってもいませんでした。

小泉岳(2150m)から緑岳トムラウシ方面の景色
標高1700m以上に生息しているといわれていますが、このウスバキはこのように素晴しい景色のところにいました。

 通りがかりに撮った写真の中から、埋もれていた珍しいものを22日後に発見しました。自然には膨大な種類の生き物がいて、それぞれの命の営みのドラマが展開されています。私たちはほんの一部を垣間見ることしかできませんが、それが見えたときは何故か感動を覚えます。これからも、そういう自然の営みをそのままお伝えできるよう、五感や第六感(意外にこれは大切かも)をとぎ澄まして山を歩くようにしたいと思います。
photo:宮下様&KEI
文:kEI